事業再構築補助金採択までのステップ

事業再構築補助金Q&A集

事業再構築補助金の直近(第11回公募)の採択率はなんと26%にまで低下しました。
ここから言えることは、誰にでもチャンスはあるが、計画的にステップを踏み、理路整然としたシナリオを組み、事業計画書を作成していかないと採択はかなり難しい、
こういった補助金、になってしまいました。

この補助金は、公募要領に記載の申請・採択要件が難解でこの理解だけでも一苦労です。
さらに、採択される事業計画書を作るためには、ひらめきと巧妙な着眼を養うことが重要です。

そのために、当事務所で支援させていただいた方の「採択までのステップ」を
ご参照いただければ幸いに存じます

採択される事業計画書はこのようなステップを経て完成した

わたしの持論を紹介させていただきます。
それは、””事業再構築補助金に採択されたかったら真に事業再構築を実践すること””です。

そんなこと当たり前のことじゃないか!と大半の方は思われるでしょう。
でも、不退転の決意で新天地で自分が戦っていけるのか?
これを考えることなく、新分野で自社が成功する行動シナリオを度外視し、
建物、設備欲しさに申請される方があまりに多いこと、落胆の極みです。

これに警鐘を鳴らした採択事例です

初回のヒアリング

トラックの写真既存事業:普通乗用車の点検整備・・ディーラー等からの受託
新規事業:大型トラックの点検整備
再構築の契機:若者の自動車離れ等による市場の縮小、下請け故の顧客影響リスク
新事業の動向:市場の伸びは期待できない。定量試算×。大型車の整備士離れが進行
狙い目顧客:2社ほど商談進行中。選ばれた理由は附属部の修理ができること
必要な有形資源:大型トラック整備工場新設と大型トラック検査装置の導入
必要な知的資産:現状有している普通乗用車のノウハウで足りる
財務状態:前年度は赤字であったが、資産超過の状態(安心😊)

打合せ後の内容整理

第一印象としては、
大型自動車の市場の動向が明るいか! 暗いか! また、
商談進行中の2社からの受注可能性がどのくらいか?
そして、附属部の修理ができることがどれだけのインパクトがあるのか?
これらが具体的に証明できれば””勝機はあるな”” といった感じでした。

課題としては、
大型車の整備士離れにどのように対処していくかです。
この理由は、重量物の運搬や取扱いで過重労働になったり危険を常に伴うことからです。
これについては、設備面等対策が十分に施されたディラーでも発生している問題であり
厄介な課題です。
ただし、これが十分でなくても払拭できれば当該分野での生き残りは可能なようです。

懸案点としては、
建物の新築に関し、どのようにその合理性を伝えたら良いか、ということが挙げられます。
審査員はまず、建物の新築に関しては
・本音と建前を使い分けた「目的外利用」が十分に可能なこと
・機械装置等と違い建物の構造上の工夫で他社との差別化が図れる要素が乏しいこと
・高額であること
から、否定的な見方をしてきます。
これに対して、どのように反感を潰していくかです。

事業計画書作成のアドバイス

まずは、市場動向に関する客観的な情報を調査することにしました。
・トラックの輸送量の統計を調べたら、以外にも横這いで推移していました。
 モーダルシフトの押され減少の一途を辿っていたか!と思っていたのですが
 以外にも鉄道貨物の輸送量が減少していました
・大型車の整備士離れについては、やはりいろいろなサイトで紹介していました。
 難解なことですが、これが克服できれば審査員に好印象が与えられます
以上の調査内容を事業計画書に記述し、「機会」(ビジネスチャンス)の
エビデンスとすることを助言しました。

次に、なぜ、附属部の修理ができることが「強み」となるかです
これについては、社長様が一家言持たれていました。
・ディーラーなど整備工場ではウィングゲート部(上述のイラストご参照)の修理
 は専門会社に再委託するようで、コスト高、長納期となっている。
 当社では、大型車の整備と附属部の修理がワンストップでできるから
 強みであるとのことを粛々とお話して下さりました。
 もちろん、ノウハウについても過去の職歴経験が活かされるものであり、
 修理プロセスを克明に話してくださりました。
・個人的には、コスト比較での優位性は示すにしてもインパクトはそれほど高くない
 と思った反面、他社より短納期で提供できることは訴えられやすいな!と考えました。
 理由は、お客様にとって、早く仕上がればそれだけ収益を生むことができるからです。
 そして、これが、2件の商談が進行している所以だな、と理解できました。

それから、重量物の取扱いに際しどのように負荷軽減を図り、雇用を継続するかです。
これについては、社長様も解を持たれていませんでした。
そこで、私の得意技、「業務フローチャート」を社長様に粗書きしていただき
そこから解決策を見出すことにしました。
そして、各アクティビティーごとに、機械作業or手作業、作業時間、作業の負荷状況
などを文書化しました。
ここからわかったことは、軽作業の附属部の修理に相応の時間を要しており、
従業員の多能工化でジョブローテーションを確立させられれば””重労働が希釈化される””
ということです。
そこで、「業務フローチャート」から””重労働が希釈化される””一連のプロセスを明快に
事業計画書に書き込むことを提案しました。
もちろん、附属部の修理時間(コスト)は価格に十分に転嫁されるものです。

以上で、「機会」×「強み」の構図が仕上り、最重要項目が押さえられました。

最後に、建物新築の合理性についての明快な記述です。
・なぜ、新築する必要があるのか?
 既存整備工場は大型車の整備を行うには天井の高さが足りない、
 地下ピットを設置しなければ大型車の修理が安全にできない 
 とのことでしたので「安全」を強調し新築の必要性を訴えました
・いくら掛かるのか?
 建物の新築の場合どうしても補助対象経費が嵩んでしまします
 そこで、仕様を明快に示し妥当性を訴えるだけでなく、
 多少こじ付け的ではありますが、支出の削減に関する着眼もしましました
 
如何でしたでしょうか!