事業再構築補助⾦ 2023年度の概要

事業再構築補助金2023年版速報

みなさんこんにちは! 坂本経営事務所の坂本でございます。

今回は、2022年12月15日に中小企業庁からリリースされました
「事業再構築補助⾦ 2023年度(令和4年度第⼆次補正予算)の概要」について
紹介させていただきます。

私見ですが、従来のものは大物政治家への忖度があったのか、
困っている方を助ける風潮が色濃かったように伺えますが、
2023年度からは、実益を生む、日本国の課題を解決する経済成長的な
視点から再編成されたように伺えます。

したがって、より強固な経営基盤を創造するための質の高い事業計画書
要求されることでしょう!

1件気になったことは、共通の申請要件の中から
「事業再構築指針に示す「事業再構築」の定義に該当する事業であること」
といった内容が記載されていないことです。

公募開始時期においては、第9回公募締切後の2023年3月下旬のようです。

それでは、個々に解説してまいります
 

全体スキーム

事業目的

PR資料には以下の通り書かれています。

長引く新型コロナウイルス感染症の影響に加え、物価高騰等により、事業環境が厳しさを
増す中、中小企業等が行う、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応し
た、感染症等の危機に強い事業への大胆な事業再構築の取組を支援することで、中小企業
等の付加価値額向上や賃上げにつなげるとともに、日本経済の構造転換を促すことを目的
とします。

 
ここは、事業の目的、要は””ここに書いてあることをして下さる方に補助金を出します”
といっているので重要なところです。

気になるワードは「付加価値額向上や賃上げに繋げる」と「日本経済の構造転換」です。

まずは「付加価値額向上や賃上げ」です。
今までは、これに変わる句として「思い切った事業再構築に意欲を有する」といった精神論でしたが、
2023年度からは「付加価値額向上や賃上げに繋げる」と現下の国策を盛り込みました。
コロナ禍の救済策から国内経済活性化に舵を切る方向性が伺えます

次に、「日本経済の構造転換」です。こちらは、2022年の第1回公募から一貫して
大上段の「事業目的」に書かれています。
でも、今まで以上にトーンが高くなってくると思われます。
理由は後述いたします。
 

事業再構築補助⾦(令和4年度第⼆次補正予算)の全体像

2023事業再構築補助金の全体像
上図を見る限る、全体像としては、

①業況の厳しい事業者向けの「最低賃金枠」「物価⾼騰対策・回復再⽣応援枠」
 見直し・継続しています。
 日本経済の構造転換を促すにしても、直近の隘路事項を払拭させるべく事業再構築の
 緊要性が求められる事業者救済制度の継続と捉えます

②産業構造の変化等により既存事業の業容が漸減していく業種・業態から新天地に転地させるべく
 「産業構造転換枠」を新設しています。
 新設といっても、これに該当する方は、今までも「通常枠」などで申請されていましたが
 本枠ならではの要件が定められています。これについては後述いたします。
 具体的には、ガソリン事業者関連、紙印刷関連などが該当するように伺えます。

③成長産業への転地、グリーン成長戦略に資する事業再構築への挑戦を促すために
 「成長枠」を新設し、「グリーン成長枠」については「エントリー」という
 新ジャンルを設けています。
 これこそが、本来の事業再構築と言えるのではないでしょうか!

 「成長枠」については(旧通常枠)と表現されていますが、後述の要件を見ますと
 まさしく新設枠です。

 「成長枠」「グリーン成長枠」ともに、補助率を1/2に設定したうえで、
 大規模賃上げを実行される方は2/3まで引き上る仕組みにしています。
 まさに、政策課題である賃上げとのバーター取引のように伺えます。

④海外で製造する部品等の国内回帰を進め、国内サプライチェーンの強靱化を促すために
 「サプライチェーン 強靱化枠」が新設されました。
 補助上限額も5億円と高額です。

個人的には、いろいろと考えられた制度だな!と思う反面、
多岐に亘る事業類型の審査項目を一定基準でで決められるのか、一寸気に掛かります。
 

各事業類型のあらまし

成長枠

 
2023事業再構築補助金ー成長枠 
上図から伺えることは
①認定経営革新等支援機関と協働で事業計画書を策定すること
②補助事業終了後3~5年で付加価値額あるいは一人当たり付加価値額が年率平均4.0%以上
 増加させる計画であること
③取り組む事業が過去〜今後のいずれか10年間で市場規模が10%以上拡⼤する業種・業態
 に属していること
④事業終了後3~5年で給与⽀給総額を年率平均2%以上増加させる計画であること
が要件のようです。

また、売上⾼減少要件が撤廃されていますので、事業再構築と言えども
既存事業が順風万態である方も申請資格がありそうです。

②は、たとえば、5年計画であれば、補助事業開始前と比べ終了後に付加価値額等が20%
 増加していることが要件のようです。
③については、対象となる業種・業態は事務局より指定され(公募開始時に事務局HPで公開予定。)
 また、指定された業種・業態以外であっても、応募時に要件を満たす業種・業態である旨データを
 提出の上、認められた場合には対象となり得るようです。
 ここはもう少し詳細な情報がないと何とも言えません。
④は、守れなかった場合に補助金の返還義務を負うのか気になりますが
 たぶん無さそうです。
 
2023年度事業再構築補助金ー成長枠
上図から言えることは、
①補助上限額は従業員数に応じ設定されていること
②中小企業の補助率は、原則、1/2であるが、大規模な賃上げを行う場合
 2/3に引き上げられる
③②については、
・給与⽀給総額を年平均6%増加
・事業場内最低賃⾦を年額45円以上の⽔準で引上げ
の双方を達成する計画を策定した場合のようである
④事業終了後3〜5年で給与⽀給総額を年率平均2%以上増加させることが出来なかった場合、
差額分(補助率1/6分)の返還を求められる。

③について、5年計画の場合
・給与支給総額を補助事業開始前と比べ終了後(5年後)に30%以上増加させること
・事業場内最低賃金を補助事業開始前と比べ終了後(5年後)に225円以上増加させること
のようです。

④については、年率平均2%以上増加させることが出来なかった場合、つまり
 大規模な賃上げで要求されている6%でなく、上で述べた2%以上増加の基本要件が守れなかった
 際に2/3から1/2の補助率とさせるべく、補助率1/6分の返還が求められる
 ということのように理解しました。
 結構易しいペナルティーのようです。

グリーン成長枠

 
2023事業再構築補助金ーグリーン成長枠 
上図等から言えることは
①上述の通り認定経営革新等支援機関と協働で事業計画書を策定すること

[エントリー]
②補助事業終了後3~5年で付加価値額あるいは一人当たり付加価値額が年率平均4.0%以上
 増加させる計画であること
グリーン成⻑戦略「実⾏計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組として
記載があるものに該当し、その取組に関連する
1年以上の研究開発・技術開発
・⼜は従業員の5%以上に対する年間20時間以上の⼈材育成
をあわせて⾏うこと
②事業終了後3~5年で給与⽀給総額を年率平均2%以上増加させる計画であること

[スタンダード]
②補助事業終了後3~5年で付加価値額あるいは一人当たり付加価値額が年率平均5.0%以上
 増加させる計画であること
③グリーン成⻑戦略「実⾏計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する取組として
記載があるものに該当し、その取組に関連する
2年以上の研究開発・技術開発
・⼜は従業員の10%以上に対する年間20時間以上の⼈材育成
をあわせて⾏うこと
②事業終了後3~5年で給与⽀給総額を年率平均2%以上増加させる計画であること

といったことが申請要件のようです。

今回新設された[エントリー]と従来の[スタンダード]を比べると
研究・技術開発期間と人材育成対象人員(ウェイト)の違いのようであり
仕組的な相違点は無さそうです
 
2023事業再構築補助金ーグリーン成長枠
補助上限枠については、
・エントリーは従業員数に応じ設定されていること
・スタンダードは従業員数に関係なく一律:1億円/1.5億円であること
のようです。

また、大規模な賃上げによる補助率の引上げ、未達の場合の補助金の返還等については
「成長枠」と同様ですので上述をご参照ください。

産業構造転換枠

 
2023年度事業再構築補助金ー産業構造転換枠
上図等から伺えることは
①認定経営革新等支援機関と協働で事業計画書を策定すること
②補助事業終了後3~5年で付加価値額あるいは一人当たり付加価値額が年率平均3.0%以上
 増加させる計画であること
③a)過去〜今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上縮⼩する業種・業態に属していること
 あるいは、
 b)地域における基幹⼤企業が撤退することにより、市町村内総⽣産の10%以上が失われると⾒
 ⾒込まれる地域に属しており、当該基幹⼤企業との直接取引額が売上⾼の10%以上を占めること
が要件のようです。その他、対象経費に廃業費が追加され最大2千万円上限額に追加されます。

a)の市場規模が10%以上縮⼩する業種・業態に属しているかどうかは、
業界団体が要件を満たすことについて⽰した場合、
あるいは、
・応募時に客観的な統計等で⽰していただき、事務局の審査で認められた場合にも対象となり得る
とのこと。
後者においても経済センサス等でデータは取りやすそうです。

また、b)については、⾃治体が資料を作成し証明する必要があるとのことで
自治体の行動に依存することになりそうです。

補助上限額は、従業員数に応じ設定されております。
また、補助率は中小企業で2/3です。

この「産業構造転換枠」は補助上限額、補助率、要件の難易性小などから
相応の方が申請されるものと見込まれます。

サプライチェーン強靱化枠

 
2023年度事業再構築補助金ーサプライチェーン強靭化枠
上図から言えることは、
①認定経営革新等支援機関と協働で事業計画書を策定すること
②補助事業終了後3~5年で付加価値額あるいは一人当たり付加価値額が年率平均5.0%以上
 増加させる計画であること
③製造拠点を国内回帰する事業であること
a)取引先から国内での増産要請があること
b)取り組む事業が、過去〜今後のいずれか10年間で、市場規模が10%以上拡⼤する
 業種・業態に属していること
④③以下の賃⾦引き上げ等要件をいずれも満たしていること。
・交付決定時点で、設備投資する事業場内最低賃⾦が地域別最低賃⾦より30円以上⾼いこと。
・ただし、新規⽴地の場合は、当該新事業場内最低賃⾦が地域別最低賃⾦より30円以上⾼く
 なる雇⽤計画を⽰すこと
・事業終了後3〜5年で給与⽀給総額を平均2%以上増加させること
が要件のようです。

③b)について、対象となる業種・業態は、事務局が指定するようです。また、
指定された業種・業態以外であっても、応募時に要件を満たす業種・業態である旨データを提出し、
認められた場合には対象となり得るようです。
これは、「成長枠」と同様です

補助上限額は5億円と高額です。

全体的な文脈から、
海外生産等している企業が国内生産等に拠点変更するケースでの補助金なのか
建材のように中国生産が主流なものを自社で生産(国内回帰)することなのか
一寸、迷うところです。 

物価⾼騰対策・回復再⽣応援枠

 
2023年度事業再構築補助金ー物価⾼騰対策・回復再⽣応援枠
上図等から伺えることは
①認定経営革新等支援機関と協働で事業計画書を策定すること
②補助事業終了後3~5年で付加価値額あるいは一人当たり付加価値額が年率平均3.0%以上
 増加させる計画であること
③2022年1⽉以降の連続する6か⽉間のうち、任意の3か⽉の合計売上⾼が、
 2019~2021年と⽐較して10%以上減少していること
 あるいは、
 中⼩企業活性化協議会等から⽀援を受け、再⽣計画等を策定していること
といったことが申請要件のようです。

物価高騰の影響で経営に苦しんでいる方の中には、
売上高は10%も下がっていないがコストアップが営業利益を下降させている
といった方が結構おられるでしょう

そういった方は、付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)が
15%以上下がっていないか
、ここ確認してみましょう

補助上限額は、従業員数に応じ設定されております。
また、補助率は中小企業で、一定額までは3/4、それを超え上限額までの部分は2/3
となるようです。
つまり、従業員数5人以下の企業で補助対象経費が1,300万円であったら、
・400万円×3/4=300万円
・900万円×2/3=600万円
・合計      900万円 となります。

最低賃金枠

 
2023年度事業再構築補助金ー最低賃金枠
上図等から伺えることは
①認定経営革新等支援機関と協働で事業計画書を策定すること
②補助事業終了後3~5年で付加価値額あるいは一人当たり付加価値額が年率平均3.0%以上
 増加させる計画であること
③2022年1⽉以降の連続する6か⽉間のうち、任意の3か⽉の合計売上⾼が、
 2019~2021年と⽐較して10%以上減少していること
といったことが申請要件のようです。

仕組み的には以前とあまり変わっていないです。
強いて、変わったところと言えば、比較対象時期が直近となったことです。

補助上限額は、従業員数に応じ設定されており、補助率は、一律で2/3
これは、従来と変わっていません

他方、
第7回公募でも採択率は8割を超えています。
ただし、申請者は全体の1%強とかなり低かったです。

理由は、ほかの枠と比べて補助金額が低いので、最低賃金枠でなく、
採択率は低いが補助金額の高い「通常枠」で申請された方が多かったのだろうと考えます。

こういった方は、2023年度からは「通常枠」が「成長枠」に移行し、要件も成長分野への参入といった制約がありますので、どのように判断されるか、悩みどころでしょう

 

その他

⼀部申請類型における複数回採択

2023年度事業再構築補助金ー複数回申請
要点は、以下の通りと考えます。
・事業再構築自体頻繁に行われるものでないから1事業者1の採択にしている
・ただし、従来のコロナや物価高騰から脱却するためのものに限っていたら
 急座しのぎで将来につながらない
 そこで、第6回公募より国策であるカーボンニュートラルに資する
 「グリーン成長枠」に限り その他の「通常枠等」で一度採択された企業でも
 改めて当枠で申請できるようになった
・さらに、2023年度より国策拡充のために「産業構造転換枠」と「サプライチェーン強靱化枠」
 が新設され、これらも、その他の「通常枠等」で一度採択された企業でも
 改めて当枠で申請できるようになった

また、追加提出資料と審査内容については、
審査は①②ともに従来より事業計画書をもとに実施されていたようですが
2023年度からはこれにフォーカスした資料の提出が求められるようです

スケジュール

2023年度事業再構築補助金ースケジュール
どうやら、
令和5年3月下旬に公募開始
・令和5年度末(2024年3月)までに3回の公募
 ・・・予算は5,800億円(事務経費含む)
がスケジュールの大要のようです。

また、
最低賃⾦枠、物価⾼騰対策・回復再⽣応援枠、サプライチェーン強靱化枠に限り、
2022年12⽉2⽇以降の事前着⼿を認めます
と注意書きされています。

ということは、「産業構造転換枠」「成長枠」「グリーン成長枠」については
事前着手が認められない、ということでしょうか?

確かに、「最低賃⾦枠、物価⾼騰対策・回復再⽣応援枠」は事業再構築の
スピードが要求されますし
「サプライチェーン強靱化枠」は足の長い施策となることから
これらに限定した、ということであれば合点がいきます。