第11回公募 事業再構築補助金、審査項目から申請の留意点を知る
みなさんこんにちは!坂本経営事務所代表の坂本です。
令和5年8月10日に第11回目の事業再構築補助金の公募が開始されました。
その中、審査項目の解説とそこから申請の留意点を知る術を紹介してまいります。
キーポイント
前回の第10回公募がそれまでと比べ一番変わったところは、審査項目の随所に「事業の目的」
に記述されている「日本経済の構造転換を促すこと」へ審査の視点が高まったことのようです。
第11回公募の審査要領は第10回公募とほとんど変わっておりませんが、
実際の審査に当たっては、より密度濃く「他者との差別化=生き残りの方策」が
診られるものと思われます。
ただし、事業再構築ですから過去に経験したことのない未知の分野へのチャレンジでもあります。
そこで、新規事業について真摯に調査・研鑽を行い新参者として生き残っていけることを
事業計画書に明快に書き込むことの重要性が増してきているように思えます。
事業化点の審査項目の留意点
項目①
審査項目のトップにあるということは、ここが審査のうえで最大の論点ということなのでしょう!
「市場ニーズの有無を検証」、有無を読み飛ばして「市場ニーズを検証」
中小企業庁としては、
やみくもに新たな事業にチャレンジすることを推奨しこの補助金を出そうとしているわけではなく、
今後の経済社会に呼応した有益な市場に事業の舵を切ってください、と言いたいのだと思います。
項目②
かなりドラスティックな表現が散見されますね!
事業再構築補助金は、困っている人を優先に給付するものではなく、「事業の目的」に記載の通り、
日本経済の構造転換を促してくれるような方に給付しますよ!と色濃く伝えているような気がします。
それでは、そのドラスティックな表現を見てみましょう!
a)価格・性能面での競争を回避し・・・差別化戦略・・・
価格・性能面での競争を回避することなんて簡単ではありません。
正直、ここはむしろ読み飛ばした方が良いでしょう。
中には、自身の事業計画書を②の末尾に記載の「ニッチ戦略」であると主張する方がいますが、
危険な賭けと思ってください。
製造するものや提供するものあるいはそのしかたが他のものに代用できるものであれば差別化になりませんし
ニッチ=マイナーと理解されることから継続的に売上・利益が確保できる客観的な証明が難しくなります。
ただ、競争を緩やかにする差別化戦略を示す方法の1つとして
市場を細分化しそれを下図のようなポジショニングマップで示し、
専門性の高い=競争の緩い分野に参入できるアクションプラン(行動計画)を策定すること、
この領域の製品・商品・サービスを求める顧客層が相応おられること
これらを明快に示せば勝機は十分にあります。
b)参入障壁の構築
以前からわたしはこれについての重要性を訴えてきました。
後述の再構築点②の「業種を転換するなど、リスクの高い、大胆な事業の再構築」のテーマが、
事業再構築指針の手引きにある業種転換の例題のように「レンタカー事業」から「貸切ペンション事業」
を目指すようなもの、
しかも、建物・設備の敷設でできてしまうようなものであったら、業種転換と言えども「参入障壁が高い」
と思われるでしょうか?
ほとんどの方が“No”と思われるでしょう。
ですから、知財(斬新なアイデア、ノウハウ)の構築・活用による参入障壁の構築について
具体的に考案し、これを明快に示す必要があります。
これがなければ、審査員としても、新参者が先駆者との戦いで生き残っていけるとは思わないでしょう!
c)模倣困難なビジネスモデルの構築、競合が少ない市場を狙うニッチ戦略
ここは無視していただいて差し支えないと思います。
このように表記する気持ちは理解できますが、中小企業や中堅企業では厳しいでしょう!
そもそも、過去に実施したことのない業種・事業・製品・商品・サービスで
模倣困難性を構築するなんて無理です!
それだけに、あたかもできそうなように記事を湾曲させることだけは絶対にやめたほうが良いです。
審査員に悪影響を植え付けてしまいます。
項目③
「中長期での」といった文言が一寸気になります。
つまり、新たな事業・商品・サービス等を立ち上げるところまででなく
「事業化段階」での課題とその解決方法も示してください!と要求されているように伺えます。
是非、「事業化段階」での課題とその解決方法のところでは、
事業をブラッシュアップさせる、つまり、確実に投資資金を回収するための方法論を記述してください。
項目④
ここでお伝えさせていただきたいことは以下の2点です。
・債務超過など直近の財務状態が芳しくない事業者は、その窮境原因と今現在打っている、
あるいはすぐにでも打つ「歯止め策」を明快に記述することが大切です。
・「補助事業を適切に遂行できる」とは、
新規事業の課題解決策が適切に遂行できるかどうかが問われています。
課題解決策を具体的に示すとともにそのための実施体制を、社内陣容のみならず、
社外協力者、専門家を含めて“誰が何を”行うのか明快に記述することが大切です。
再構築点の審査項目の留意点
項目①
1つ目のポイントは、
・(SWOT分析)した上で、事業再構築の必要性が認識されているか、です。
コロナ禍からとにかく脱出しなさい!といったトーンから、
日本経済の構造転換を促すポジティブな事業再構築を促すことに目的が変わっています。
したがって「SWOT」の『O』=機会(良好な市場環境)を的確に見出しそこに参入する。
そして、『S』自社の強みを活かしてイノベーションを引き起こしてほしい。
このような事業戦略をSWOT分析を通じて理路整然と描いているか?
ここが審査員の視点だと思います。
したがって、ここで点数に差が出るかもしれません。
また、「複数の選択肢の中から」とあえて書かれているのは
事業テーマから逆算した形式的なSWOT分析は論外! 精緻に分析しなさい!
といった意図ではないでしょうか
項目②
ここで申し上げたいのは、
「業種を転換するなど」と事業再構築類型の「業種転換」とは違うことを理解してください。
そして、「リスクの高い、大胆な事業の再構築」とは事業テーマそのものではなく
それを成し遂げるための「アクションプラン」であることを押さえておいてください。
項目③
効果的な取組となっているか。
まずは、費用対効果についてのポイントは「実現性」だと思います。
費用対効果の定量値はいかようにでも作文ができてしまいますので・・・
それから「既存事業とのシナジー効果」は必要以上に反応しないほうが良いと思います。
こじ付けは禁物です。審査員の心証を悪くします。
むしろ、申請前に新規事業の調査・研鑽をしっかり行い、それが、”自社の人材、技術・ノウハウ等の強み”だと
堂々と言えるようにする。これが重要だと思います。
中途半端な既存事業の移植をシナジー成果と訴えるより、こちらのほうがよっぽど「効果的な取り組み」の信ぴょう性が高いと思います。
項目④
「先端的なデジタル技術の活用」とは「DXデジタルトランスフォーメーション)」を指します。
つまり、自社にとって有益な、つまり、儲けに繋がるデジタル技術の活用かどうかです。
したがって、いかに高度なデジタル技術を導入するにせよ、効果的な製造方法や提供方法
を実現するための手段として活用するものでなければ評価は下がります。
ここが論点となります。
それから、新しいビジネスモデルの構築は、業界の標準的なビジネスモデルについて
新参者の目から見た改善事項を盛り込むことで描けるかもしれません。
つまり、業界標準に疑問を持つことが肝要です。
項目⑤
ここでは特段申し上げることはございません。
政策点の審査項目の留意点
項目①
再構築点①の留意点に準拠した事業計画であれば当該審査項目も概ねクリアできるでしょう!
項目②
再構築点④の留意点に準拠した事業計画であれば当該審査項目も概ねクリアできるでしょう!
ここで言う「技術」にはアイデアやノウハウの含まれるはずです。
項目③
ここでは特段申し上げることはございません。
項目④
ここは、該当になる方のみ反応していただければと思います。
項目⑤
ここは、事業計画のテーマが地域の産業構造と関係が薄くても、
自社で行う技術的課題や事業課題の解決方法が地域事業者の模範となるようなことを
探し出して記述しましょう!
項目⑥
事業承継を契機として・・・ ここも、該当になる方のみ反応していただければと思います。
ただし、「アトツギ甲子園」の情報は事業承継当事者以外の方にも参考になるものです。
是非、ご覧になってください。
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