第10回公募 事業再構築補助金、審査項目から申請の留意点を知る
みなさんこんにちは!坂本経営事務所代表の坂本です。
令和5年3月30日に第10回目の事業再構築補助金の公募が開始されました。
第10回公募は、申請枠の新設や変更など制度・仕組み面で大幅な改訂がございました。
ただし、審査される事業計画書の記述項目はほとんど変わりませんでした。
一方、審査項目中のキーワード、表現方法の改訂が相応にあったことから
事業計画書作成において、見出しは変わらないものの記述の視点やその強弱、
伝え方について一考を要するものとなりました。
これらについて、主要点を個別に解説してまいります。
目次
キーポイント
第10回公募が前回までと比べ一番変わったところは、審査項目の随所に「事業の目的」
に記述されている「日本経済の構造転換を促すこと」の優劣評価が顕在化されたこと
のようにうかがえます。
「事業の目的」・・・このようなことをして下さる方にこの補助金を給付しますよ
といったメッセージ
したがって、困っている人を優先に給付するものではなく、国の政策に呼応し地域経済を
盛り立ててくれるような方に給付しますよ!と色濃く伝えているような気がします。
ただし、事業再構築ですから過去に経験したことのない未知の分野へのチャレンジでもあります。
そこで、新規事業について真摯に調査・研鑽を行い新参者として生き残っていけることを
事業計画書に明快に書き込むことが今までに増し肝要になってきたと思っています。
事業化点の審査項目の留意点
項目①
文言は第9回公募までと変わっておりません。ただし、2番目からトップに格上げ。
それだけに「市場ニーズの有無を検証」、有無を読み飛ばして「市場ニーズを検証」
ここが論点となりそうです。
中小企業庁としては、
やみくもに新たな事業にチャレンジすることを推奨しこの補助金を出そうとしているわけではなく、
今後の経済社会に呼応した有益な市場に事業の舵を切ってください、とのメッセージだと思います。
項目②
ここが、かなりドラスティックな表現となったところです。
事業再構築補助金は、困っている人を優先に給付するものではなく、「事業の目的」に記載の通り、
日本経済の構造転換を促してくれるような方に給付しますよ!と色濃く伝えているような気がします。
それでは、第10回公募から追加されたドラスティックな表現を見てみましょう!
a)価格・性能面での競争を回避し・・・差別化戦略・・・
価格・性能面での競争を回避することなんて簡単ではありません。
正直、ここはむしろ読み飛ばした方が良いでしょう。
中には、②の末尾に記載の「ニッチ戦略」と絡めてここを主張する方がいますが、
危険な賭けと思ってください。
製造するものや提供するものあるいはそのしかたが他のものに代用できるものであれば差別化になりませんし
ニッチ=マイナーと理解されることから継続的に売上・利益が確保できる客観的な証明が難しくなります。
ただし、競争を緩やかにする差別化戦略を示す方法の1つとして
参入市場を細分化しそれを下図のようなポジショニングマップで示し、
そこに参入できるアクションプラン(行動計画)を策定すること、
この領域の製品・商品・サービスを求める顧客層が相応おられることを明快にしめせば勝機は十分にあります。
b)参入障壁の構築
以前からわたしはこれについての重要性を訴えてきました。
後述の再構築点②の「業種を転換するなど、リスクの高い、大胆な事業の再構築」のテーマが、
事業再構築指針の手引きにある業種転換の例題のように「レンタカー事業」から「貸切ペンション事業」
を目指すようなもの、
しかも、建物・設備の敷設でできてしまうようなものであったら、
業種転換と言えども「参入障壁が高い」と思われるでしょうか?
ほとんどの方が“No”と思われるでしょう。ですから、知財(斬新なアイデア、ノウハウ)の構築・
活用による参入障壁の構築については明快に示す必要があります。
これがなければ、審査員としても、新参者が先駆者との戦いで生き残っていけるとは思わないでしょう!
また、参入障壁の構築の精度がどうか良くチェックしてくださいね!
と審査員にメッセージを発しているのかもしれません
c)模倣困難なビジネスモデルの構築、競合が少ない市場を狙うニッチ戦略
ここは無視していただいて差し支えないと思います。
このように表記する気持ちは理解できますが、中小企業や中堅企業では厳しいでしょう!
百歩譲ったとしても過去に実施したことのない業種・事業・製品・商品・サービスで
模倣困難性を構築するなんて無理です!
それだけに、あたかもできそうなように記事を湾曲させることだけは絶対にやめたほうが良いです。
審査員に悪影響を植え付けてしまいます。
項目③
第10回公募より「中長期での」といった文言が追加となりました。
つまり、新たな事業・商品・サービス等を立ち上げるところまででなく
「事業化段階」での課題とその解決方法を示してください!と要求されているように伺えます。
これは、第9回公募でも同様の意味合いでしたが、
今回「中長期での」という文言を追加することでより明快にしたのだと思います。
是非、「事業化段階」での課題とその解決方法のところでは、
事業をブラッシュアップさせるための方法論を記述してください。
項目④
ここでお伝えさせていただきたいことは以下の2点です。
・債務超過など直近の財務状態が芳しくない事業者は、その窮境原因と今現在打っている、
あるいはすぐにでも打つ歯止め策を明快に記述することが大切です。
・「補助事業を適切に遂行できる」とは、
新規事業の課題解決策が適切に遂行できるかどうかが問われています。
課題解決策を具体的に示すとともにそのための実施体制を、社内陣容のみならず、
社外協力者、専門家を含めて“誰が何を”行うのか明快に記述することが大切です
再構築点の審査項目の留意点
項目①
第9回公募までは2番目でしたが第10回公募からはトップに格上げされました。
1つ目のポイントは、
・(SWOT分析)した上で、事業再構築の必要性が認識されているか、です。
第9回公募までは、
・事業再構築を行う必要性や 緊要性が高いか
でした。
いままでは、必要性・緊要性が論点でしたので、
ここで採点に差が出ることはあまりなかったのではないかと思います。
第10回公募からは、コロナ禍からとにかく脱出しなさい!といったトーンから、
日本経済の構造転換を促すポジティブな事業再構築を促すことに目的が変わりました。
したがって「SWOT」の『O』=機会(良好な市場環境)を的確に見出しそこに参入する。
そして、『T』自社の強みを活かしてイノベーションを引き起こしてほしい。
このような事業戦略をSWOT分析を通じて理路整然と描いているか?
ここが審査員の視点だと思います。
したがって、第10回公募からはここで点数に差が出るかもしれません。
また、「複数の選択肢の中から」とあえて書かれているのは
事業テーマから逆算した形式的なSWOT分析は論外、精緻に分析しなさい、
といった意図ではないでしょうか
項目②
ここで申し上げたいのは、
「業種を転換するなど」と事業再構築類型の「業種転換」とは違うことを理解してください。
そして、「リスクの高い、大胆な事業の再構築」とは事業テーマそのものではなく
それを成し遂げるための「アクションプラン」であることを押さえておいてください。
項目③
第9回公募までは
「市場ニーズや自社の強みを踏まえ、「選択と集中」を戦略的に組み合わせ、リソースの 最適化を図る取組であるか」でした。
これをより明快に改訂したような気がします。
まずは、費用対効果についてのポイントは「実現性」だと思います。
費用対効果の定量値はいかようにでも作文ができてしまいますので・・・
それから「既存事業とのシナジー効果」は必要以上に反応しないほうが良いと思います。
こじ付けは禁物です。審査員の心証を悪くします。
むしろ、申請前に新規事業の調査・研鑽をしっかり行い、新規事業に通じる「強み」を伸ばすこと、
それから「弱み」を少しでも克服しておくこと、
これが重要だと思います。
中途半端な既存事業の移植よりこちらのほうがよっぽど説得力があると思います。
れを成し遂げるための「アクションプラン」であることを押さえておいてください。
項目④
「先端的なデジタル技術の活用」とはDXを指します。
つまり、自社にとって有益な、つまり儲けに繋がるデジタル技術の活用か、
ここが論点となります。
それから、新しいビジネスモデルの構築は、業界の標準的なビジネスモデルについて
新参者の目から見た改善事項を盛り込むことで描けるかもしれません。
つまり、業界標準に疑問を持つことが肝要です。
また、第10回公募から「サプライチェーン」といった文言が追加になりました。
これにより、有効な手打ちが考案できそうですし書きやすそうですね!
項目⑤
ここでは特段申し上げることはございません。
政策点の審査項目の留意点
項目①
再構築点①の留意点に準拠した事業計画であれば当該審査項目も概ねクリアできるでしょう!
項目②
再構築点④の留意点に準拠した事業計画であれば当該審査項目も概ねクリアできるでしょう!
ここで言う「技術」にはアイデアやノウハウの含まれるはずです。
項目③
ここでは特段申し上げることはございません。
項目④
ここは、該当になる方のみ反応していただければと思います。
項目⑤
ここは、産業構造転換枠の対象となる地域で事業を営み相応の雇用を創出するような方であればうまく噛み合うかもしれません。
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